読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ロードバイクの「ロ」

横浜在住・グループライド系ロングライド派。クラブ・ロードロ代表。メンバー募集中!

グランツールを走った日本人はドーピングの話題からは逃れられない

スポンサーリンク

いや〜すごく面白い本に出逢いました。心に響く言葉が散りばめられつつ、なかなかショッキングなことも書いてある。さらっと読めるけど、ロードバイク乗りにとってはとても読み応えのある内容です。

どんな本かというと、これです。

敗北のない競技:僕の見たサイクルロードレース

敗北のない競技:僕の見たサイクルロードレース

現時点で、ブエルタ・ア・エスパーニャを完走した唯一の日本人である土井雪広選手の自伝です。

高校時代の自転車部の話、2年で辞めた大学自転車部の話、シマノレーシング時代の話、そして8年にわたるヨーロッパでの競技活動の話。
それらが本人の視点から読者に語りかけるような文体で書かれていて、土井選手のことを名前程度しか知らない俺でもわかりやすく、おもしろく読むことができました。

なかでもとくに面白いと感じたのは、ドーピングに関する記述ですね。

p.86
でも、薬物に頼っているのは彼だけじゃない。ドーピングかどうかはともかく、薬物はプロサイクリストの「必需品」だ。


p.94
誤解を恐れずに言えば、ドーピングという手段があることは、プロトンでは一種の常識にすらなっている。


p.159
今でもドーピングはプロにとって「常識」なんだ。


選手の能力を一時的に高める薬物というのは合法・非合法含めてたくさんあって、それらのうち非合法のものがドーピング。そして、ドーピングかどうかはともかく、みんな薬物を使っているとのこと。

でも、テレビを見ていてもそんな姿は映らない。なんでも、選手たちはテレビカメラに映っていないのを確認した上で、そういった薬物を摂取しているのだとか。

p.93
プロトンのほとんどの選手がレース中に薬を飲んでいる、と聞いても信じられない人が多いかもしれない。そんな場面はテレビには映らない。
当たり前だ。皆、カメラを避けて飲んでいる。プロにとって、カメラに映らないようにするのはそれほど難しくない。


気になるのは土井選手自身が使っていたかどうかですが、合法のものは使っていたけどドーピングはしていないとのこと。

p.87-88
ある時、チームのドクターが僕にA、Bという2つの薬を渡して、こう言った。どちらも合法だから心配はいらない。Aは“痛み止め”だ。ゴールの1時間前になったら、Bと一緒に飲め。
痛み止め、という彼の説明には違和感を覚えた。何か別のものなんじゃないか? けれど結局、僕は言われた通りにした。
“痛み止め”は強烈に効いた。
(中略)
僕は、一番苦しいはずの最後の1時間を飛ぶように走り、上位でゴールした。
(中略)
後でわかったことだけれど、AとBは当時WADA(世界アンチドーピング機構)の監視プログラム下にあった薬だった。つまり、「ドーピングには相当しない」。


もちろん土井選手はドーピングを肯定していません。
でも、ドーピングという手段があり、それを使っている選手はいるということ、そしてドーピングをしていない選手も合法的な薬物を使用していることを認めています。

なかなかショッキングな話ですよね。俺も読んでいて「え!?」と思いましたし。

で、この本を読んで思ったのは、グラン・ツールを走るレベルの日本人選手は当分の間、ドーピングの話を避けて通れないんだろうな、ということ。

ヨーロッパのトッププロたちの間では合法・非合法を含めて薬物使用が当たり前になっている。
一方で、そんなトッププロの世界で活躍できる日本人はまたまだ少ない(俺は土井選手以外だと新城選手と別府選手しか知らないんだけど、他にも彼らのような日本人選手がいたとしても、まだ片手で数えられるくらいですよね?)。

本場のサイクルロードレースの情報がぜんぜん入ってこない日本では、彼らのようなトッププロの世界を間近で見て、一緒に走った人が貴重な情報源なわけだ。
そうなると当然、ドーピングのことを記者やファンに尋ねられますよね。

それだけでなく、本などの依頼も来るでしょう。
たぶん、別府選手や新城選手にもそのうち出版のオファーが行くと思うんだけど、というかすでに来ている可能性が高いけど、本を出すのであれば、やはりこの本のようにドーピングに触れざるを得ないと思う。
というか、別府選手はあのランス・アームストロングと同じチームにいたんだから、どう考えたって言及せざるを得ない。

この2人が本を出したとき、ドーピングについてどんな形で触れるのか興味がありますね。土井選手がここまで明言してしまった以上、まさか「薬物使用? 何それ?」では済まないだろうし。

土井選手は「トッププロだって普通の人間だ、聖人君子じゃない」と言っていて、ロードレーサーがドーピングに手を出してしまうことに対して、ある種の理解を示していんだけど2人はどうなんだろうか?
気になるところではある。

ちなみにサイクルロードレース界の根深いドーピング問題に関して興味ある人にはこの本がおすすめ。
去年読んだ本のなかでダントツで面白かったです。

シークレット・レース―ツール・ド・フランスの知られざる内幕 (小学館文庫)

シークレット・レース―ツール・ド・フランスの知られざる内幕 (小学館文庫)

ドーピングっていうと、ラクして勝つためのもの、悪いヤツがズルして勝つためのものっていうイメージがあると思うんだけど、そうではなくて、努力を怠らず徹底的に自分を追い込んで体を鍛え抜いた人たちが、それでもやらないとレースで勝てないから手を出すもの、というようなことがこの本でも土井選手の本でも書いてあって、日本人が持つドーピングのイメージと現実の違いが書かれていて、そういった点も興味深い。

あと、こうしたことを踏まえて以下の動画を見ると、これまた興味深い。


検証!第100回ツール・ド・フランス①歴史とドーピング問題未公開 - YouTube